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インタビュー
事務所設立から10年以上にわたり、家事事件に注力しています
これまでのキャリアについて教えてください。
もともと京都市の職員として約9年働いており、2001年に弁護士になりました。その後、京都市内の法律事務所に所属し、2012年に速見弁護士とともに当事務所を設立しました。事務所設立から10年以上経ちましたが、設立当時と変わらず2名体制で、離婚事件などの家事事件を数多く取り扱っています。
事務所として、どういったことを大事にされていますか?
「聴く力」を非常に大事にしています。
まずは相談内容を正確に把握するために、聴き取る力が大事です。特に離婚問題は、金銭トラブル等に比べても感情が先立ち、事実の捉え方や見方が正確でないこともあるので、丁寧に聴き取るようにしています。
また、たとえば、「離婚を考えています」ということで相談に来られたとしても、本当に離婚ありきなのか、違う解決を求めていらっしゃるのか、ご自身でも整理がついていないことが少なくありません。
整理がついていないのに、離婚ありきの進め方をしてしまうと、本当に求めておられる結論とは大きくずれてしまう可能性があります。
ずれてしまうというのは、具体的にはどういった場合でしょうか?
たとえば、配偶者が不貞に及んだ場合、不貞の相手を徹底的に追い詰めたいと希望する方は少なくありません。
もちろん、気持ちはわかります。ただ、配偶者に反省させて、不貞相手と別れさせ、結婚生活を続けることを望んでいらっしゃるのであれば、不貞相手に対する攻撃が、必ずしもプラスに働くわけではありません。攻撃された不貞相手が配偶者に救いを求め、配偶者も「そこまでするか」と感じ、配偶者と不貞相手のつながりが強くなってしまう可能性さえあります。仮にそうなると夫婦の距離は離れてしまい、「配偶者に反省させて結婚生活を続けたい」という本当の望みは叶いません。
「最も大事にしたいことは何なのか、本当に実現したいことは何か」を、お話する中で、よく考えていただき、優先順位をつけていくことが大事だと考えています。
なるほど、感情に任せて行動するのではなくて、先のことを考えないといけないのですね。
理想はそうですね。感情に任せて行動してしまいたくなる気持ちは理解できます。ただ、一度行動に移してしまうと後戻りできないことも多いんです。
1人で抱えこんでいると、どうしても視野が狭くなってしまいます。弁護士に相談し、コメントを受けながら気持ちや状況を整理することで、今後どうすべきかを冷静に考えられるようになると思いますよ。
離婚したいと相談に来られた方が、考えを変えることもあるのでしょうか?
はい、そういうこともあります。当事務所では、離婚ありきのお話はしません。
繰り返しになりますが、相談者が何を求めていらっしゃるのか、という点を確認するところからはじめます。
また、本当に離婚をお考えの場合も、離婚さえすれば全て解決という話ではありません。離婚成立後も生活は続きます。その生活設計をどうしていくのかは、非常に大事です。現時点で離婚した場合に、経済的に困り、今よりつらい思いをするようであれば、少なくとも「今」離婚するといった選択はしない方がよい、とも言えます。
離婚するかどうかを決めるのは、あくまで御本人です。
ただ、離婚するにしてもタイミングを考えたり、離婚後の生活をきちんと考えた上で決断しましょうということは常々お伝えしています。もちろん自分1人で全部考えてくださいというわけではなく、公的な制度の紹介なども含めて一緒に考えていきます。
離婚について年間約200件の相談。様々なケースに対応します
離婚について、どういった相談が多いでしょうか?
1つは離婚するかどうか争いがあるケースです。離婚したいけど相手が応じてくれない、反対に、離婚したいと言われたけれど応じたくないというケースです。もう1つは、離婚することには合意できているけれど、財産分与・親権・養育費などの条件面で激しい争いがあるケースです。DV被害者からの相談も多く寄せられます。
家事事件を中心に取り扱っているということですが、どれくらい相談を受けていらっしゃいますか?
事務所全体で年間200件ほどです。もちろん全てご依頼いただくわけではありません。相談者は、やや女性が多いですが男女半々くらいです。
過去の依頼者の紹介でいらっしゃる方も多いです。「この事務所が良いと紹介されて連絡しました」というふうに言っていただけると、非常に嬉しいですね。
依頼者との対話を重視。心の声を汲み、後悔のない、ベストな選択を後押しします
先生の事務所ならではの強み、他の事務所との違いはどういったところでしょうか?
1つは、離婚の取り扱い件数です。私自身、弁護士として20年以上の経験がありますし、数多く家事事件を取り扱うようになって10年以上になります。もちろん年数や件数が全てではありません。ただ、知識や見通しの正確さ、解決に向けた引き出しの多さなどは、経験によって磨かれてきたと感じています。
また私は2016年から、パートナー弁護士の速見は2020年から、それぞれ家庭裁判所の家事調停委員をしている点も強みだと思います。
家事調停委員というのは、どういった仕事なのでしょうか?
調停では、裁判所が間に入って話合いでの解決を目指します。調停委員は、夫側・妻側双方から話を聴いて、問題点を整理したり、ケースに合った解決策を考えたりして、当事者間の合意が成立するようサポートします。
調停委員は、豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から、最高裁判所によって任命されることになっています。具体的には、原則として40歳以上70歳未満で、弁護士、司法書士、鑑定士などの専門家をはじめ、各分野から選ばれます。
調停委員としての経験が、どのように弁護士業務に活きていますか?
1つは、見通しを立てやすくなったことです。話合いで解決できなければ調停を申し立てるわけですが、調停になった後の展開等について、以前より、より高い精度で考えられるようになりました。
また調停委員は、適宜、裁判官と「評議」というものをします。評議をすることで裁判官の着眼点や考え方がわかりますし、最前線の判断基準や考慮要素も知ることができます。たとえば面会交流なども、時の経過に従い裁判所の考え方は変わってきています。裁判所の実務運用を自分の弁護士業務でも活かせることは、調停委員を経験しているからこその財産だと思います。
先生とお話していると、すごく相談者や依頼者のことを考えていらっしゃるし、自己研鑽を惜しまないと言いますか、まさにプロフェッショナルな先生だなと感じます。
そう言っていただけると嬉しいです。依頼者の話を丁寧に聴き取り、心の声を汲み取ろうとする点では、自負があります。これからも1つひとつの案件と真摯に向き合い、最善の解決を導くために力を尽くしたいと思います。
相談者や依頼者とのコミュニケーションでは、どういったことを心がけていますか?
同じ言葉でも、信頼している人から言われるのと、そうでない人から言われるのとでは、受け止め方が全然違いますよね。ですから、まずは思いの丈を話していただいて、共感するところから始めています。「この弁護士は私の話を聞いてくれる」「相談しやすい」と思っていただくことが、信頼関係構築の第一歩です。じっくり話を聞いて依頼者が望んでいることや事実関係を把握し、その上で、「相手方と徹底的に対立することもできるし、そうではない方法もありますが、どうしていきましょうか」というふうに今後の方針を考えていきます。
相手のある話ですし、状況は刻一刻と変わります。最初の相談の段階で、全てを見通してベストな選択をすることはできません。だからこそ、状況に応じて、常に選択肢を示して、法律的にできることの限界も示しながら、各選択肢のメリット・デメリットを丁寧に説明しています。そのとき考えられる選択肢の中から、依頼者自身が納得して決断を下せるように働きかけています。
初回相談無料。「話をしに訪れる」感覚でお気軽にご相談ください
初めて相談に行く場合、どういった流れで進むのでしょうか?
まずは、電話かネットで予約をしていただきます。相談は、基本的には事務所までお越しいただいて対面で行いますが、状況によってはZoomでの相談にも対応しています。
初回相談無料で、時間としては30分程度を目安にしています。継続的に相談していただく場合、2回目以降は有料ですが、条件を満たせば法テラスの相談料援助制度を利用できますので、経済的なご負担なく相談可能です。
弁護士へ相談するメリットというのは、どういったところでしょうか?
法律の専門家によるアドバイスを受けられることと、問題の整理ができることです。もちろん弁護士に相談したからといって、お悩みが魔法のように解決するわけではありません。しかし、今自分がぶつかっている問題はどういう性質のものか、今、まずやるべきことは何か、逆に今、考えても仕方ないことは何かーー。弁護士と対話し、そういったことを1つひとつ整理していくことで漠然とした不安がなくなり、次の一歩を踏み出すことができます。
相談後に依頼するかどうかは別の話です。人によっては、相談して気持ちの整理がついたり、後は自分でやってみるという方も少なくありません。もちろん、ご依頼いただければ、弁護士が代理人として、相手との交渉や調停での対応をします。ご自身で対応するよりはストレスは軽減されますし、公正な解決にもつながるかとは思います。
最後に、離婚について悩みを抱え、弁護士への相談を考えている方に向けてメッセージをお願いします。
「自分の悩みは弁護士に相談すべきことなんだろうか」とか「今が相談すべきタイミングなんだろうか」と考えて、弁護士に相談する決心ができない方も多いと思います。ですが、全く気負う必要はありません。「話をしに訪れる」という感覚で、事務所に来ていただければと思います。お話いただく中で、自分は本当に離婚したいのか、仮に離婚したら生活や環境がどう変わるか、といったことを整理できて、次に取るべき行動を考えられるようになると思います。
相談は、早ければ早いほどいいです。まだ色々悩んでいて抽象的な話しかできないとしても、今後こういうところに気をつけてくださいとか、こういうことが起こったらまた相談してくださいというアドバイスもできますから。
離婚を考え始めたけれど、まだ相手には言っていないという段階でも良いのでしょうか?
もちろんです。むしろ、それくらいの段階からご相談いただくほうが良いです。一度離婚を切り出してしまうと、それによって関係が悪くなり、相手も構えてしまいます。それよりも、色んな選択ができる段階でご相談いただいて、本当は自分がどうしたいのかと考える方が後悔せずに済むと思います。